しくみ通信

平成29年 皇紀2677年 西暦2017年 第五の新月の日に




「暗闇を呪うより、蠟燭に火をつけようじゃないか」
           サティシュ・クマール(イギリスの思想家)

千夜一夜物語の本当の話
人は思い込みで生きています。誰かに思い込まされている、または自分が勝手に思い込んでいる場合があります。世界中の人々は思い込みという渦の中で生かされているのです。それは正しい世界ではなく、歪んだ見解の世界といえるかもしれません。ただし、他によって思い込まされたのではなく、自らが希求する思い込みは人を救う場合もあるでしょう。

今回の通信の冒頭では、世界的に有名なアラビアンナイト「千夜一夜」の〈アラジンと魔法のランプ〉の原典を取り上げました。原典があることを知る人は少ないので、その一部をここでご紹介します。

「たった一枚の紙が世界に広がる」
アラビアンナイトは9世紀頃にバグダッドで成立したとされています。西暦751年の「タラス川の戦い」がきっかけとなり、中国から紙製法が中東に伝えられ、それから1世紀後にアラビアンナイトが記されました。この紙片からアラビアンナイトは世界中に広まっていくことになります。
初めてヨーロッパに紹介したアントワーヌ・ガランのアラビアンナイト「千夜一夜」には〈アラジンは中国の少年である〉と書かれています。また、アラビアンナイトの舞台は中国とする話がいくつも収録されています。
中東と中国は陸と海のシルクロードで結ばれ、国際的な湾岸都市として発達しました。12・13世紀の泉州(福建省)には多くの商人がおり、中東から観た中国は、魔法のランプのように魅惑的な国であり、ファンタジーの世界であったことでしょう。中東のイスラム世界から遠く離れた中国は、不思議な民が創造した高度な文明社会に映り、それがアラビアンナイトのイメージとなったのです。
中国の原典は、「中国で母親と貧乏暮らしをしていたアラジンが、叔父と騙るマグリブ出身の魔法使いにそそのかされて、穴倉の中にある魔法のランプを手にしたところから物語が始まる。そのランプを擦ると魔神があらわれた。魔神にはランプを擦った者の願いを叶える力があり、アラジンはその力を借りて大金持ちになり、皇帝の娘と結婚する。しかし、魔法使いは魔法のランプを奪い取り、アラジンの御殿ごと皇帝の娘をマグリブに連れて行ってしまう。だが、アラジンは指輪の魔神の力を借りるなどして、魔法のランプを取り返し、魔法使いを退治して再び御殿を元の場所に戻す」という物語でした。この原典が中国の紙製法の文化とともに世界中に拡がっていったのです。
アラジンの魔法のランプには、人の願いを叶える力があります。
ただし、「こうなるといいな」「こうだといいな」「だったら」「だとしたら」など思い込みからくる憶測の願いは「欲求」に過ぎず、心から信じて決めることが真に「願う(望む)」ことです。「こうする」「ああする」「こうなる」「ああなる」と、自分で決めることなのです。自分の決めたことでなければ何も叶いません。
なぜなら、魔法のランプは自分の精神世界なのですから…。

現代の「アラビアンナイト」(ウォルトディズニー映画)は、中国の原典にある魔法のランプをセリフにして伝えています。
“Trust me!”(自分を信じて)
さて、わたしたちは自らを灯し、社会を照らしていけるでしょうか。